海外ナンパ師のABC

外国の女性を抱くことについて

Have fun, have sex

 「同じような声掛けして、同じような店に連れ出して、同じようなセックスして何が楽しいんだ」

 先日、イーストは渋谷の路上で吐き捨てるように言った。彼は僕のストリートナンパを1番見てきた男だ。僕が同じようなオープナーで同じような女の子たちに声をかけ、同じような話をするところを間近で何度も目撃している。

 彼は今、ボルチオ開発だかなんだかにハマっている。僕は話半分に聞いているから具体的には何をしているのかはよくわからないが、とりあえず女の子の性感帯を探求することに喜びを感じているらしい。

 

 今日はイタリア人の女の人と飲んだ。tinderで会った人だ。わざわざ横浜から僕のいる場所まで来てくれた。最初から食いつきは上々。初対面で結構緊張しているのが見て取れたが、少し時間を置けば普通にセックスできる女だ。

 2時間くらい飲んだら適当に寝てすぐに家に帰ろう。それで何か理由をつけて音信不通になろう。居酒屋を出て手をつなぐ。ラブホの方へと歩く。また1即。

 ただ唯一の問題は、僕がヤりたくないということだった。彼女が失恋を乗り越えるために右肩に彫った刺青の話なんか興味なかったし、僕に気を使って作る笑顔も緊張を隠すためにネックレスをいじる手の仕草も全てが不愉快だった。彼女と寝た後、数日間、しつこく連絡が来て、僕が冷たい対応をするうちに自然消滅するという道筋も目に見えていた。そうやって僕は女と自分を傷つけてきた。そしていい加減その繰り返しに飽きていたし耐えられなかった。

 だから僕は手をつなぐことすらせずに逃げるように家へと戻った。

 

 家に帰ってぼんやりしていたら、玄関のドアが開く音がして続いて"Yo!"と怒鳴り散らす声が聞こえた。僕も"Yo!"と怒鳴り返す。

 今、半同棲状態にあるスウェーデン人の男だ。彼は毎日のようにバーやクラブに赴いては女の子をお持ち帰りする真性のプレイボーイだ。耳を塞ぎたくなるような大声でよくしゃべりよく笑うのが特徴で、そのエネルギーだけで一気に場を支配してしまう。初対面のどんな人であっても一瞬で打ち解けて、"easygoing"という言葉を体現したような奴だ。

 彼は僕のもとにふらっと来ては、満面の笑みで、「昨晩はファックしまくって最高だったぜ」とかいった話を報告していく。僕も彼にどんな女をファックしたかとか北欧の女は最高だとかいった話で応戦するのだけれども、人の話を全く聞かない男なので、自分が話したいことを話終わったら満足した表情でどこかへ行ってしまう。しかし、不思議と彼と話した後は気分が高まり楽しくなる。

 僕は今日起きたイタリア人との話をしようと口を開いた。なんとなく滑稽な話にして終わらせたかったのだ。彼がいつものように満足したような笑顔で適当なコメントをくれれば、今日の出来事は全て帳消しになる気がした。

 「今日のデートは最悪だったよ。全く楽しくなかった」

 しかし、彼は僕の期待に答えてくれはしなかった。隣の部屋でパソコンをいじる手を止めて僕の方をまっすぐと見つめてきた。

 「お前は何を求めてデートに向かったんだ」

 「なにって……セックスかな」

彼は僕の向かい側の椅子にドスンと腰を降ろして、徐ろに口を開いた。

 「いいか。女はお前とファックするためにデートに行くんだ」

 「そうだろうね」

 「それでもってお前は女をファックしなければならない。何故ならお前は男だからだ。男である限り、それは自然なことだ」

 「うん」

 「ただ俺がデートに行く前にいつも心に決めていることがある。それは、今日のデートを俺の人生の中で最も楽しいデートにするってことだ。俺はどんなデートだって人生最高のデートにするんだ」

 「相手の女を楽しませようとかそんなのはどうだっていいんだ。女が退屈だったら店員と楽しめばいい。女の周りにいる他の客と絡めばいいじゃないか」

 「お前が楽しんでいれば相手も楽しむ。それでお前をドリーム・ガイだと思うんだ。そしたらファックは目の前だ。実際のところファックなんかどうでもいい。いつだってお前が1番楽しむことだけを考えろ」

 「女はお前のことをファックしたいんだけど、ファックするに値するかどうかいつも見極めている。お前がファックしたいだけの男だったらそんなのはすぐにお見通しさ。自分が楽しむことだけを考えろ。自分がfucked upすることだけを考えろ。そうすれば自ずとファックは結果としてついてくる」

 「だから、俺の前で『今日のデートはつまらなかった』とかシケた面を晒すのは金輪際なしにしてくれ。人生は短いんだ」

 彼は話し終えると、いつもの無邪気な笑顔に戻って僕の腕をブンブン振り回して部屋を出て行った。

 

 ここ2日でそんなことが起きた。自分の文章力のせいでうまくまとめられないんだけど、とりあえずどこかに記しておきたかったので、取り急ぎここに書いた。